今週からベルリンはすっかり寒くなりました。日毎に太陽の力が衰え冬が始まったことを実感します。この寒く暗くなった夕方に、子どもたちの歌声が聞こえて来る事があります。11月11日の聖マーティンの日(Martinstag)の辺りに、子どもたちが提灯(Laterne)に明かりを灯し、歌を歌いながら近所を練り歩くのです。
こんばんは、Tamakiです。
今日は、ドイツの聖マーティンの日(Martinstag)とはどんな日なのかをお伝えしながら、11月という月がどのような月なのか、またどんなことをして過ごせば心地よく過ごせるのかのヒントを綴ります。
静かに過ごす月の提案
聖マーティンの日(Martinstag)
ドイツには、もともと、ハロウィンを祝う風習はありません。そのかわり、11月11日の聖マーティンの日(Martinstag)に同じような風習があります。
その日に子どもの場合、どんなことを行うかと言うと。
幼稚園や小学校低学年の子どもたちが、夕方5時ごろ(もう既に真っ暗)に幼稚園や小学校に集まり、皆で近所を練り歩く提灯行列をします。
1.提灯(Laterne)を作ったり、買たりして用意する。
2.夕方暗くなって集まり、提灯をさげて、歌を歌いながら練り歩く。
3. 広場で、歌を歌ったり、吹奏楽の演奏を聞く。
こんな歌を歌います。
"Laterne, Laterne, Sonne, Mond und Sterne"
Laterne=提灯、Sonne=太陽、Mond=月、Sterne=星
Laterne, Laterne, Sonne, Mond und Sterne - Sankt Martin Lied | Laternenlieder | Kinderlieder deutsch
"Ich geh mit meiner Laterne"
Ich geh mit meiner Laterne - Laternenlieder | Kinderlieder deutsch - Sankt Martin Lied
4. 主に子どもが演じる聖マーティンの偉業についての寸劇をみる。
5. 提灯行列をしながら園庭や校庭に戻り、パンを二人で一つもらう。
6.大きな焚き火の周りに座り、もらったパンを分け合って食べる。
また、この日の食事ではヨモギ(Beifuß)やジュニパーの実(Wacholderbeeren )などの香辛料がきいたガチョウを食べるそうです。私のKaQiLa〜カキラ〜のお客様は、毎年レストランでお友達とMartinsgans(聖マーティンのガチョウ)を食べるのが楽しみだとおっしゃいます。
聖マーティンの日(Martinstag)に行われる風習には、キリスト教が入り込む前にあった土着の風習や自然信仰、キリスト教の教義で後付されたもの、中世の農民の風習が入り交ざっているようです。
キリスト教的教義
聖マーティン(St.Martin)はキリスト教の守護聖人の一人で、慈悲深い聖人として称えられています。
こんなエピソードがあります。
彼は、元はローマの軍人でしたが、常に人を助ける慈悲深き人でした。
遠征の途中で、寒さに凍える貧しい物乞いに 、自分のマントを剣で半分に裂いて与えます。
その夜、その物乞いがイエス・キリストの姿で夢に現れます。
それを機に彼は、軍を辞め、キリストの教えを学ぶためにフランスへ移住します。
人助けに優れた人だったことから、住民にも好意を持たれ、フランスのトゥールの市民より司教になって欲しいと頼まれます。
彼は、恐れ多いと辞退するも、最終的にはトゥールの司教に就き、後30年間勤めることになったそうです。
聖マーティン(St.Martin)の「人と分け合う」、「人へ分け与える」精神を称え、彼の命日であるこの日が、「聖マルティンの日(Martinstag)」となったそうです。
提灯行列を終えて帰ってきた子どもたちが、一つのパンを分け合って食べるのは、こんなエピソードがあるからなのでしょうね。
聖マルティンの日(Martinstag)は「クリスマス前の断食」前、最後の日なので、断食前には「栄養たっぷりのご馳走」を食べるというわけで、ガチョウのローストを食べるという言い伝えもあります。何故ガチョウを食べるのかという理由には、他にもいろいろな言い伝えがあります。
中世の農民の風習
中世では、聖マルティンの日(Martinstag)は、農民が一年を締めくくる日でもありました。農繁期が終わり、この日に雇用契約の更新や地代の支払いなどが行われたそうです。
土地が肥沃ではなく、冬の寒さが厳しいドイツでは、たくさんの家畜を越冬させるための飼料が足りませんでした。そのため、冬に入る前に、越冬できる数だけを残して、食用に処理されていたのです。
農繁期が終る聖マルティンの日(Martinstag)に処理した肉を保存用ではなく、ローストしてお祭りをして食べたのかもしれません。
処理されたガチョウは、色々な用途に使われました。羽は枕や布団の詰物に。脂肪分は油に、肉は食料が不足する冬のための保存用にと。
ドイツでは、黒パンの上に、バターではなく、動物性脂肪(ベジタリアン用植物性のものもあります)を溶かして作ったシュマルツ(Schmalz)を塗って食べることもあります。このシュマルツ(Schmalz)は豚の油から作られるものが主ですが、ガチョウの油から作られるものもあります。ドイツではクリスマスにガチョウを焼いて食べますが、私の隣人は、その時に出た油でシュマルツ(Schmalz)を作っていました。ガチョウをローストすると大量の油がでます。びっくりするぐらい。きっと、中世の農民たちは、聖マルティンの日(Martinstag)にローストしたガチョウから出た油を、冬の保存食としていたのではないかと想像します。
冷蔵庫がなかった当時、処理した肉は、塩漬けや燻製にして保存され、冬の間の食料になりました。ドイツといえば、ソーセージ、ですが、このソーセージの起源は解体時に余った肉の部位を使用して作られたものです。ギリギリの生活をしていた農民たちが、解体した肉のどんな部分をも無駄にしないという知恵が生み出したものなのです。
中世の農民たちは、春になってまた農業ができるようになるまでの食料を確保するために、聖マルティンの日(Martinstag)辺りで家畜を解体して祭りを行い、豊作を祈願して焚き火を行い、残った灰を土地が肥沃になるようにとの願いを込めて、畑に撒いたそうです。
土着の習慣、自然信仰
聖マルティンの日(Martinstag)に行われる祭りは、キリスト教が入り込む前からいる土着民ケルトのサマイン、サウィン(Samhain)にあたるという説もあります。
サマイン(Samhain) とは、ケルトの言葉で「夏の終り」という意味だそうです。これは、ケルトの大晦日で、ケルトの僧呂は大きな焚き火をして火祭りを執り行ったそうです。
ケルトの人々にとっては、一年の始まりは冬なんですね。
そう言えば、キリスト教の教会暦は、アドヴェント(Advent)から始まると聞いたことがあります。キリスト教の暦も冬から始まるようです。アドヴェント(Advent)はクリスマスから逆算して四つ前の日曜日。年によって違いますが、11月の終わりか、12月の始めです。その一週間前の日曜日はトーテンソンターグ(Totensonntag)と言って、ドイツでは、なくなった人のことを思い祈る日です。11月1日のアレーハイリゲン(Allerheiligen)という聖人や殉教者を記念する日から、11月末のトーテンソンターグ(Totensonntag)の間にドイツ人は、お墓参りに出かけるようです。花屋さんにも、お墓に備える特別な花飾りが売られています。
さて、ケルトの信仰では、年が改まる時には、異界の扉が開き、先祖の霊が戻っくると信じられています。その時に、同時に悪霊も行き来するので、それを慰めたり追い払ったりする必要があったそうです。ハロウィンに似ていますね。
冬は、ドイツを含む北ヨーロッパでは、寒さと暗がりの季節。サマイン(Samhain)で燃やす大きな焚き火によって、夏は燃え尽きると言う象徴的な言い伝えもあります。そして、ケルトの人々は、サマイン(Samhain)後の暗い冬は眠りにつき、来年への力を養う時期だと考えているそうです。
今でも、聖マーティンの日(Martinstag)に子どもたちが最後に取り囲む焚き火は、こんな言い伝えからきているのかもしれません。
また、ケルトの信仰では、火と光で悪霊を追い払うことができるとして、光を放つ太陽、月、星々は信仰の対象となっています。子どもたちが聖マーティンの日(Martinstag)に、光の灯った提灯(Laterne)を持って、太陽と月と星々と光の歌を歌いながら、練り歩くのは、ケルトのこういった信仰の名残なのかもしれません。
日本では11月も良い季節なので、想像がつきにくいと思いますが、ドイツの11月は、昼間でも曇っていて、夕方の4時や5時には真っ暗、朝も8時ぐらいにならないと明るくならず、寒くて、霧も煙る、暗い月。死と隣り合わせているという感じの月です。
そんな時に、子どもたちの歌声を聞き、可愛い提灯の明かりを目にしたり、家に帰ってろうそくの火を灯すと、心がほんわりと温かくなります。
大げさですが、今は、暗い時期、耐える時期だけど、光を見ていると和み、いつかまた再生はある、太陽は戻ってくる、再び輝く日、春はやってくるって思えるんですよ。
ケルトの人々は、冬を、暗黒の季節と考えていました。夏は、光の季節。光と闇の境目にあたる、サマイン(Samhain)の辺りは、年の終わりと始まりであり、「変容と目覚め」の時期でもあるそうです。
そう言えば、ベルリンの新空港は、10月31日に開港し、冷戦時代からあって長い間市民に親しまれたテーゲル空港は、11月8日にとうとう閉港しました。私はなんでこんな中途半端な時期に入れ替わるのだろう?と思っていたのですが、もしかしたら、ドイツ人も、11月11日あたりが一年の境目と考えていて、「変容と目覚めの」時期、新旧が入れ替わる時期だと考えているのかもしれません。そう言えば、偶然かもしれませんが、11月9日はドイツの「運命の日」だと言われ、歴史的に変化の起きた日でもあります。長い間東西ドイツを分断していたベルリンの壁が崩壊したのも、11月9日です。
カキラリスト養成コース
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静かに浄化する時期
11月11日の聖マーティンの日(Martinstag)辺りを境に、ドイツでは変容が始まるようです。夏が終わり、冬が始まる。特に11月は、眠りにつき、次への再生のための力を蓄える時期のようです。11月終わりのトーテンソンターグ(Totensonntag)は、皆静かに過ごし、ダンスや音楽と言った催し、パーティなどは控えることになっています。ドイツ人が楽しみにしているクリスマス前のクリスマスマーケットも、トーテンソンターグ(Totensonntag)が終わるまでは、開催しません。トーテンソンターグ(Totensonntag)が終わった次の月曜日から始まります。11月は、静かに過ごし、心身の浄化に適した月のようです。
Martinsgans(聖マーティンのガチョウ)料理にも使われている香辛料ジュニパーの実(Wacholderbeeren )は、身体への効能として、優れた利尿作用と発汗作用があるそうです。体内の毒素を排出する作用が強く、新陳代謝を促進する効果が期待されるそうですよ。またスッキリした香りは、心を安定させてくれます。お茶にしたり、お風呂に入れたりして、心身の浄化をしてみてはいかがでしょうか?私は、ジュニパーの実(Wacholderbeeren )をお風呂に入れています。フルーティーな中にもスッキリした香りで気持ちがいいですし、何より体の芯から温まります。
ジュニパー(Wacholderbeeren )は、昔フランスの病院で空気の浄化や、伝染病予防に用いられていたように、空気の浄化にも効果があるそうです。これからクリスマスまでの時期、心身ともに静かに浄化する時間を作ってみるのも良いかもしれません。
本日も最後までお読み頂きありがとうございました。
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