前回の記事で、
私達の腕は、体を支えるという役割よりも、箸やフォークを使って食事をしたり、縫い
物をしたり、体を洗ったり、掃除をしたり、文字を書いたり、子どもを抱っこしたり
と、手や腕を使って様々な動作ができます。
一方、四本足の馬や犬のような動物は、腕(前足)で体を支えます。
と書きました。でも、腕で体を支えたり、移動していた時期が私達にもあります。
毎月第2・第4木曜日のブログを担当しています、
THD,Japan~日本総合健康指導協会~
カキラドイツ支部長・KaQiLaエグザミナーのTamakiです。
さて、腕で体を支えたり、移動していた時期とは、・・・そうです、赤ん坊の時です。
赤ん坊の時には、手は何かを掴む、指す等だけではなく、体を支える役割も果たしま
す。
赤ん坊は、腹ばいになった状態から、肘、前腕、手を支えにして顔を起こしますね。
もう少し大きくなれば、手を支えにして胸から上を起こします。
さらに大きくなれば、肘、前腕、手でたぐりよせるようにズリズリとワニのように這い
ます。
そして、さらに大きくなれば、手の平で床から体を支え、四這いをします。
手は体を支えるものであり、移動の手段としての役割を果たしていました。
今回は、「箸で食べる時とナイフ&フォークで食べる時の体の使い方は違うのか?」の
テーマから少々外れますが、赤ん坊が腕で体を支える動きについて、考えます。
乳児が腕で体を支える動き
首すわり
赤ん坊が肘や手(肘屈曲位)で体を支える頃に、同時にできていることがあります。そ
れは、首が座っているということです。
だいたい、生後3ヶ月から4ヶ月ごろになると、「首すわり」が完了します。
ある日突然首が座っているわけでは、当然なく、「首すわり」完了までにも段階があり
ます。
まず、うつ伏せで寝ていても、仰向けで寝ていても、横を見るようになります。
そして、周囲をぐるりと見回せるようになります。
赤ん坊だった頃の息子もぐっと、体を伸び縮みさせたり、のけぞらせるようにして周囲をよく見ていました。
その後、うつ伏せにすると少しの時間であれば、頭を持ち上げることができるようにな
ります。
赤ん坊だった頃の息子は、手を横につっぱるようにして、頭を持ち上げたり、手を使わず、足を蹴るようにして、ぐっと背中を反らせるようにしていました。
その後、うつ伏せの状態で頭を持ち上げる時間が長くなります。このころには、しっか
り肘や手で体を支えて、胸から上を起こすことができるようになります。
この頃の息子は、手は横ではなく、比較的自分の体の前にきて、肘が横ではなく、自分の体の方へ向いてきていました。
背骨の伸展
赤ん坊は、首から胸へと、つまり、上から下へと、除々に動かせるようになってくるの
ですね。
頭を回旋させたり、頭を起こしたり、背骨を伸展させたり。また、この時期、寝返りを
試みますので、背骨の回旋も起こります。
さて、背骨を伸展させる代表的な筋肉に、多裂筋があります。
多裂筋は、首から腰の脊椎の椎体をまたいで付着する小さな筋肉で、両側の多裂筋が同
時に働くと脊骨は伸展します。
多裂筋という名前は知らなくても、インナーマッスルという言葉は、皆さんも聞いたこ
とがあるかもしれません。
多裂筋は、インナーマッスル(体幹を安定させる筋)の一つです。
多裂筋以外の インナーマッスル には、横隔膜、腹横筋、骨盤底筋群があります。
赤ん坊が頭を起こす動作で使っている背骨の筋の一つには、この体感を安定させる筋の
一つである多裂筋があるのです。
ところで、赤ん坊は発達途中で、首が座ったり、首を持ち上げたり・・・一つ一つ動き
を獲得していきますが、背骨の形状は、立って活動している私達と違うのでしょうか?
はい、違うのです。
立って活動している私達の脊骨は全体でS字カーブを描いています。頸椎は前弯、胸椎
は後弯、腰椎は前弯しています。
でも、生まれたての赤ん坊の背骨は、C字カーブを描いているのです。
たしかに、生まれたての赤ん坊はまぁるく丸まっていますね。
生まれたばかりの赤ん坊の頸椎や腰椎は、前弯していないのです。このようにC字カー
ブで生まれてきた赤ん坊は、その後、横をみたり、周囲をみたり、頭を持ち上げたり、
背骨を伸展させたり、寝返りをうつ、腕で体を支えるなどの活動を行う中で、多裂筋を
始めとした背骨周りの筋を発達させ首の前弯を獲得し、立って歩くまでには、腰椎の前
弯も獲得します。
環椎後頭関節
肘や手(肘屈曲位)で体を支え始める3ヶ月・4ヶ月頃には、環椎後頭関節も伸展や屈
曲がしっかりと行えるようになってきます。
環椎後頭関節とは、何でしょう?
首のいちばん上にある関節で、重たい頭を支えている場所です。
首のいちばん上の骨(環椎)と後頭部の骨(後頭骨)をつないでいるので、両者の名前
を取って環椎後頭関節と言います。
後頭骨の左右の小さな足のような出っ張りが、環椎の左右のくぼんだ台座の上に乗った
関節です。
環椎は、英語でAtlas(アトラス)と言います。両腕と頭で天の蒼穹を支えギリシア神話の神様の名前です。重い頭を支える環椎らしい命名ですね。
ちょっと、一休み。
環椎後頭関節を感じてみましょう。この動きをすると、首や肩もリラックスしますよ。
人差し指を左右の耳の穴に突っ込んで、両方の人差し指の延長線上が体(頭)の中心で
重なる地点を思い浮かべます。その地点を中心に、首をYES,YESと小さく振るようにう
なずいてみます。
すると、環椎の台座の上で、後頭骨の足がコロコロと前後に転がるような感じがするは
ずです。
あまり、ブンブンふると感じることができません。優しくうなずくようにやってみてく
ださいね。
この関節に正しく頭が乗ったときには、背骨と頭の関係がニュートラルになるので、余
計な力を使わないでも、首が安定します。首や肩まわりへの負担が減り痛みの軽減に繋
がります。
環椎後頭関節に頭がのることで、脊柱を伸ばす多裂筋がしっかり働くことができるとも
言われています。
赤ん坊が肘や手(肘屈曲位)で体を支え始める頃には、首が座り、環椎後頭関節の屈曲
伸展が行えるなど、多裂筋が働いて背骨がしっかり伸展できる条件が揃って来るのです
ね。
4ヶ月の息子が、手で体を支えて、胸を起こしている写真をみると、後頭骨から胸へかけてのラインが伸びやかで本当に綺麗です。
脱線しますが、腹ばいの状態で胸から上を持ち上げることができていた4ヶ月頃の息子の話です。息子は窓から見える葉っぱが大好きでした。ある日、ベットの上を仰向けで、しゃくとり虫のように胸を反らせたり戻したりを繰り返しながら頭の方へ進んでいきました。環椎後頭関節も多裂筋も駆使して、持ち合わせたすべての能力を使って見たいものを見に行っていたのかも知れません。赤ちゃんの欲求と動きの関係に、すごいと感嘆の声が出ました。
肩甲骨帯
赤ん坊の「首すわり」を確認するために、医師が赤ん坊に対して行うテストがありま
す。
赤ん坊を仰向けにした状態で、両手を持って、ゆっくり引き起こすテストです。
そのテストで、医師は、地面から45度ぐらい引き起こした時に、以下の点をチェック
するそうです。
・ちゃんと頭がついてくるか。
・頭と体が並行な状態になっているか。頭が後ろに倒れないか。
・同時に、肘や肩関節にちゃんと力が入り、腕を曲げているか。
肘が曲がっている状態での、肘や肩関節の力の入り具合も、首が座っているかどうかの
判断材料なのですね。肩甲帯と呼ばれる部分の安定を、みているのかもしれません。
肩甲帯とは、肩甲骨、鎖骨、上腕骨の近位部、胸骨によって構成されている場所です。
先程の項では、体の軸となる背骨を中心にみてきましたが、ここでは、体の軸に付属す
る肩甲帯に目をむけてみましょう。
体を起こす時は、両手で体を支える力も使いますよね。赤ん坊も同じです。
両手で体を支える時に働いているのが、肩甲帯。つまり肩甲骨、鎖骨、上腕骨の近位
部、胸骨によって構成されている場所です。
4ヶ月の息子が、手で体を支えて、胸を起こしている写真をみると、肩甲骨が盛り上
がり、まるで立甲しているように見えます。
その様子は、手で床を押す力が、
手〜腕〜肩甲骨〜背骨へと伝わているようにや、
手〜腕〜肩甲骨〜鎖骨〜胸骨へと伝っているように感じます。
実際、肩甲骨、鎖骨、上腕骨の近位部、胸骨によって構成されている肩甲帯は、筋骨格
的に、体軸骨格へつながっています。
体軸骨格とは、頭蓋、脊柱、肋骨および胸骨からなる骨格で、それに対して、肩甲帯は
附属肢骨格に属します。
附属肢骨格に属する肩甲帯は、どのように、体軸骨格とつながっているのでしょう。
例えば、鎖骨は、関節を介して胸骨へつながっています。ここは、胸鎖関節と言いま
す。
そして、肩甲骨は、筋肉を介して背骨や、肋骨へつながっています。
どのような筋肉があるのかを簡単にご紹介します。
肩甲骨を背骨へつなげている筋肉には、菱形筋があります。
菱形筋は、「第6頚椎(C6)から第4胸椎(Th4)にかけての棘突起から起こり、外下方に斜
走し肩甲骨の内側縁に付く」筋です。
肩甲骨を肋骨へつなげているのは、前鋸筋、小胸筋です。
前鋸筋は、「胸部の筋肉のうち、胸郭外側面にある胸腕筋のうちの一つ。肋骨(第1~
第9)腱弓を起始とし、肩甲骨と胸郭との間を後上方に走りながら、肩甲骨に停止す
る」筋。
小胸筋は、「胸部の筋肉のうち、胸郭外側面にある胸腕筋のうちの一つ。肋骨前面(第
3~第5前面)を起始とし、上外方に集まりながら、肩甲骨の烏口突起に停止する。」
筋です。
背骨や肋骨と肩甲骨は関節を形成していませんが、これらの筋肉によってつながってい
る。つまり、動きの関係性があるということです。
まとめ
赤ん坊が腕で体を支えるられるのは、「首すわり」が前提にある。、赤ん坊が腕で体を
支える動きをすることで、背骨を伸展する多裂筋が働き、環椎後頭関節の屈曲伸展が
しっかり機能し、頸椎の前弯が形成され、背骨の安定性が増していくと考えられます。
手から腕、鎖骨・肩甲骨へといった肩甲帯の安定もはかられます。
また附属肢骨格である肩甲帯と、背骨・胸骨・肋骨といった体軸骨格との相互関係が養
われていくようです。
生まれ変わる骨格を体験できるエクササイズ
私達の骨格には、頭蓋、脊柱、肋骨および胸骨からなる体軸骨格と鎖骨や肩甲骨、骨盤
を含む四肢の骨からなる附属肢骨格があります。
赤ん坊が肩甲帯を使って体を起こすためには、脊柱など体軸骨格の発達も必要でした。
私達がお伝えしているカキラでは、附属肢骨格である肩甲帯を様々に動かし、深く吸う
呼吸で肋骨や背骨を動かし、体軸骨格を整えます。
発達段階では、関連づいていた附属肢骨格と体軸骨格も、日々の生活習慣の中で、関係
性がうまくいかなくなる箇所もでてきます。
カキラではそれらを、本来もって生まれ、立ち上がるまでに獲得してきた骨格へと自ら
の動きで、導いていくことで、無理をしていた箇所が減り、働くことを忘れていた箇所
がまた、働きはじめ、体の歪みが改善されていきます。
様々な動きを、流れるように行う中で、レッスンが終わった後には、赤ん坊がすくっ
と、何の力みもなく立っているような体の開放感を味わえます。
一度、ぜひ、ご体験下さい。
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Tamaki
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